某ITベンダー 法人顧客向けPR誌

なぜか「創刊2号」から受注となった、ネットワーク機器の最新情報誌

今回ご紹介するのは、ITベンダーのPR誌です。BtoBのソリューション型耐久財にコンサルティングや保守などのアフターフォローサービスを組み合わせて販売する企業の場合、顧客との関係強化を特に重視したプロモーションを展開することが多いようです。目的はリプレース(買換)需要の喚起、そして顧客からの情報収集のトリガーとして機能させること。顧客が社内でネットワーク機器などのリプレースを検討している際、PR誌などを通じてつながりを担保しておけば、「検討中」という情報を入手しやすくなり、さらにはコンペの際に声がかかる可能性も高くなります。

このPR誌も同様の狙いから創刊されたのですが、当社ならびに実際の窓口となった印刷会社に制作委託の打診がされたのは、なぜか創刊前の企画段階ではなく、創刊号の発刊直後でした。

【クライアント紹介】シスコシステムズ取扱いのプロフェッショナル

依頼してきたクライアントは、某商社。IT機器を専門に取り扱い、自社でソリューション開発もしていますが、海外の大手IT機器メーカーの製品の取扱いが売上の大きな柱になっているようです。その中の一つ、レイヤ2/3スイッチやルーター、LANといったネットワーク機器を扱うシスコシステムズの製品の販売促進のために企画されたのが、今回ご紹介するPR誌です。どうやらシスコの販促戦略が絡んでいるようだったのですが、詳細まではわかりません。

【受注の契機】「理解できる人につくってほしい」という要望

このPR誌は、シスコシステムズの最新技術、製品、導入事例を企業の情報システム/ネットワーク担当者に紹介することを目的に企画され、当社とは別の制作会社によって創刊号がつくられました。制作を指示したのは、クライアントであるITベンダーのマーケティング担当部門。かなり苦労されたようです。そして、その仕上がりにも満足しなかったようです。某印刷会社の営業担当者が相談を受け、いきなり創刊2号目から制作会社も印刷会社も入れ替えて、完全リニューアルしたいという要望を受けました。

制作スタッフ総入れ替えの理由は、明快でした。「制作スタッフが誰も商品や技術を理解していない」、この一点だけだったそうです(印刷のクオリティも不満だったそうですが、それはまた別の話)。創刊号は、製品紹介、技術解説、インタビュー形式の導入事例で構成されていましたが、どれも「理解できていない人が書いた」「理解しないままデザインを起こした」というのがよくわかる仕上がり。なるほど、と思いました。当社の代表である五十畑は当時、某超大手通信回線事業者のBtoBサービスなどに精通していたので、ネットワーク機器の知識はなくても、そのあたりはすぐに実感できてしまったのです。

相談したいというご要望を受け、印刷会社営業、デザイン会社、当社でクライアントを訪問。創刊号の問題点についてヒアリングした後に、改善のためのアイデアや当社の実績などについて、じっくりと話しました。そして、その翌日には受注が決定。創刊2号から制作を委託したいとのことでした。

【制作内容】(当たり前すぎる)基本方針を掲げて対応

制作、特にライティングにあたっては、以下の3点を基本方針として掲げて対応しました。まあ、当たり前すぎることなのですが。

  • 商品・技術を事前に十分理解してから取材・執筆に臨む
  • わからないこと、理解しきれなかったことは、事前に、あるいは取材の場などで、積極的に質問する
  • 取材時は、売り手(クライアント)・買い手(ユーザー企業)の両方の視点からインタビュー、ヒアリングを行う。

基本台割は、こんな感じです。

コンテンツ概要
最新技術解説・基礎知識多くの情報システムが気になっている最新通信技術の解説。超高速LAN回線、侵入防止用のセキュリティ、社内Wi-Fiなどを取り上げました。
導入事例このPR誌の目玉企画です。シスコシステムズの通信機器を導入した企業の情報システム担当者およびクライアントの営業担当者、SE、工事担当者などへのインタビュー。一度に10名近くの関係者に、グループインタビュー的な感じで話を伺いました。構成はこんな感じ。●事業概要●現状のネットワークの課題と要件定義●提案内容・コンセプト・課題解決のために活用した技術と機器・ネットワーク構成(ネットワーク図…提案資料を参考に、当社が描き起こし)●導入プロセス●導入後の運用状況●今後の要望、計画等
商品紹介技術解説や導入事例で使用した機器に限らず、さまざまな商品を紹介。
啓発コミック巻頭の技術解説とは別の技術を、コミックでおもしろおかしく、そしてわかりやすく解説。クライアントからテーマをいただき、当社でコマ割・ネーム起こしまでの原作を担当。イラストレーターにコミック化してもらいました。

第1回の編集会議の際には技術に精通した本社勤務のSEにもご参加いただき、私が理解できるまで、しっかり解説をしていただきました。もちろん、それだけでは知識獲得は不十分。シスコシステムズのサイトから技術資料をダウンロードしたり、市販の専門書を買って読んだりして理解度を深め、さらには取材する事例で担当SEが作成した提案書も事前に入手し、疑問点をクリアにしてからインタビューに臨みました。ライティングの際は、企業の情報システム担当者の知識レベルに内容を合わせることを重視して、難しすぎたりやさしすぎたりなりすぎないよう、注意して書き進めました。

【最後に】理解に徹した姿勢と、バランスのよい内容が評価され、長期受注案件に。

このPR誌は当社がかかわりはじめた創刊2号目から好評を博し、シスコシステムズの販促戦略が変更となった(らしい)タイミングまで、4年以上にわたり継続受注となりました。

担当しつづけてわかったことは、「商品理解こそがすべての出発点」ということ。そして、理解するためには商品に興味を持つことも大切です。実際、取材でお会いしたSEの皆さんは誰もがユニークで、商品や提案に誇りを持っている、愛すべき人たちばかりでした。廃刊となったのは残念でしたが、受託した私たちスタッフも、この媒体を誇りに思っています。

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